消費者の自己破産



1 急増する消費者破産

 クレジットやサラ金などの多額の負債を抱えた消費者が自己破産するケースが増えています。昭和50年代にはサラ金の借金苦による一家心中、自殺や

 犯罪多発など社会問題化し、サラ金破産も増大しましたが、サラ金規制により沈静化しました(貸金業規制法、出資取締法(いずれも昭和58年11月1日施行)により業者の登録制、取立方法の規制や刑罰金利40.004%/年などの規制が行われた)。その後、“カード社会”が到来し、多重債務者が急増しています。その背景として、

(消費者側)

 便利なクレジットによる、支払能力を超えた無計画な物品購入が安易になされる。クレジットとは、代金を信販会社に立替え払いしてもらうもので、借金であるが、借金したという意識が希薄。テレビ、マスコミなどを通したコマーシャリズムにおどらされている側面もある。

(業者側)

 信販会社によるクレジット・カードの無差別過剰発行、サラ金業者による返済能力を超えた過剰貸付け(高金利、カードによるキャッシングなど)が横行。クレジット加盟店も売上げ増進のため積極的にクレジットに勧誘。といったことが指摘されています。
 クレジットで買物をしたが、割賦金が支払えなくてサラ金で借入れをし、高い金利のためにその返済も滞り、更に他のサラ金から次々に借り入れて、結局債務が雪だるま式にふくれ上がる(多重債務)というパターンです。

2 破産と免責

 破産制度は、多額の債務のため支払不能となった債務者について、裁判所が、 その財産を債権者全員に公平に分配するとともに、 債務者に再出発の機会を与える制度です。破産者の財産を換価して債権者に分配し、それでもなお残る債務を棒引きにしてもらう免責制度があります。消費者の自己破産は、この免責を受けて債務を免れ、──一生借金を背負って生活していくことをなくし、──再出発するために行なわれています。

 破産免責に対しては、借りたものは返すべきだとして借金踏み倒しの風潮を嘆く意見(モラル低下論)も有力です。しかし、貸手側の業者(プロ)が返済能力の判断の誤った面もありますし、借手が一生借金を背負っていかなければならないのは人道上も問題であり、要は免責制度の運用いかんだと思われます。

3 自己破産手続の流れ

 破産申立て債務者(破産者)の住所地の地方裁判所に「破産申立書」を提出します。その際に、同時に、

 戸籍謄本、住民票

 債権者一覧表/借用証書・サラ金返済領収証など資料

 財産目録/不動産登記簿謄本など

 陳述書(事情説明書)

その他の関係資料をなども提出します。

 破産申立人代理人(弁護士)は債権者に通知し、債権の取立てをしないよう依頼すると、厳しい取立ては実際上収まります。

破産の審尋

 申立て後、1ヶ月程度以内に、裁判所からの呼出しがあり、申立ての内容について裁判官から直接口頭で質問を受ける審尋手続があります。

破産宣告と管財手続

 申立て時に提出した資料や審尋結果から破産要件(支払不能であること)が備わっている判断されると、破産宣告がなされます。

 債務者に、換価して債権者に配当すべき財産(不動産や預貯金など)があるときは、破産宣告と同時に破産管財人が選任され(通常は弁護士が選任される)、破産管財人は、破産者の財産を売却したりして金銭に換価し、その上で、すべての債権者に債権額に応じて公平に配当します。この配当手続がすべて終了して破産手続は終わります。

 配当に回すような財産が債務者にないときは、破産宣告と同時に破産手続は終了します(この場合を「同時廃止」と言います)。

免責申立てと審尋

 破産宣告を受けても、そのままでは債務は残ったままです。これを帳消しにするには、裁判所に申し立てて免責の決定を得なければなりません。

 免責申立ては、同時廃止のときは破産宣告確定(官報公告日より2週間)から1ヵ月以内に、破産管財人が付いたときは破産手続終了までに行います。

4 免責の要件

 免責されるのが原則で、実際にも大部分(9割以上)の破産者は免責を受けています。しかし、一定の事由(免責不許可事由)があって、そのような破産者は不誠実であると判断されると、免責を認められない場合があります。

〔免責不許可事由〕

財産隠しなど自己や特定の債権者の利益ために、財産を隠したり、財産価値を減少させる。

浪費・ギャンブル

浪費やギャンブルによって、著しく財産を減少させたり、過大な債務を負担した詐術(さじゅつ)による信用取引

破産宣告前1年以内に、既に返済不能の状態であるのに、詐術(積極的に相手方を騙すこと)用いて、相手方にそうでないと誤信させて借入れをした裁判所に対する虚偽の陳述

破産法に定める義務に違反した10年以内の免責

免責申立て前10年以内に免責を得たことがある場合

5 破産による不利益

破産に対する誤解・偏見

破産すると、

すべての財産を取り上げられてしまう?

戸籍に載って、子の結婚、就職に支障が出る?

勤め先を解雇されてしまう?

選挙権がなくなる?

などと心配する人がいますが、いずれも誤解です。

不動産など換金して配当に回すべきめぼしい財産は処分されますが、生活に最低限必要な身の回り品は残されます。破産者本人以外の家族の物も、もちろん処分されません。同時廃止のときは財産処分は一切ありません。破産しても、戸籍や住民票に記載されることはありません。

 破産宣告は官報で公告されますが、裁判所から勤め先に通知するようなことはありません。勤め先が破産したことを知ったとしても、破産を理由に解雇することはできません(現実には、使用者の無理解から、あるいは本人が居ずらくなって退職する事例が少なくありません)。選挙権、被選挙権などの公民権が停止することはありません(戦前と異なる)。

破産宣告による不利益

破産管財人が選任される場合
財産の管理処分権の喪失

破産宣告があると、財産(破産宣告時にもっていた財産)を勝手に処分したりできなくなります。ただし、破産宣告後に取得した財産、収入は破産者が自由に管理処分できます。

転居や長期旅行には裁判所の許可が必要
破産管財人による郵便物の開披・閲覧
資格制限

弁護士、税理士などの資格を失います。

警備員、保険外交員などになれません。

公務員の資格に影響なし。

会社の取締役・監査役などにもなれません(他人の財産を管理運営する地位には就けない)。こうした資格制限は免責を受ければなくなります。

同時廃止の場合、 だけが問題になります。

免責決定後の不利益

 個人信用情報機関に事故情報(ブラックリスト)として登録され(5〜7年)、この間は、融資を断わられる(融資を受けるのは事実上困難)。

6 自己破産の費用

申立費用 印紙1000円