e−Business (99年12月)

(社) 中小企業診断協会富山県支部

経営コンサルタントの今野氏は、小売業を営む繁田社長を訪れた。
以下は、今野氏と繁田社長の会話である。

繁田 新聞等で、日本経済は不況を脱しつつあると言われるようになってきましたが、本当ですかね。
 
今野 その傾向は見えてきているのですが、このところの好況感の改善は、公共投資などの「上げ底」で視線が高くなった状態といえますね。公務員層まで広がった賃金デフレ(所得の落ち込み)、企業の設備投資の抑制、リストラの進展による雇用不安の増大などで本当の景気回復には、まだまだ時間はかかると思いますよ。
 
繁田 そんな中で元気な業種というと、どこですか。
 
今野 通信関係が元気です。特に携帯電話を切り口とした業種が有望です。
 
繁田 そういえば、私の息子は、なぜか携帯電話を3台も持っていますよ。
 
今野 日本における携帯電話普及台数は5,000万台(99年7月末)です。日本の人口の約2倍の米国でも7,000万台(98年末)ですので、日本は携帯電話を最も使いこなしている国のひとつでしょう。
 
繁田 日本の携帯電話業界のマーケット金額を計算すると、1台当り月/3〜4,000円だから… 月/1,500〜2,000億円??
 
今野
 
 
 
そうです。最低でも月2千億円のお金が、キャッシュとして携帯電話業界へ流れており、しかもこの2千億円は、ほぼ荒利といえるかも知れませんね。
 
繁田
 
すごい金額ですね! 株価が高いはずだ。
 
今野





 
株価が高いにはまだまだ理由があります。携帯電話はあらゆるe−Businessのインターフェイス(色々なシステムに入り込む画面)になる可能性があるのです。携帯電話業界は月2千億円の現金収入と株高を背景に、今後もe−Businessの可能性の追求と設備投資を積極的に推し進めてゆくと思いますよ。
 
繁田

 
お客様にとってパソコンだけでなく携帯電話もe−Businessの端末になるということですね。
 
今野
 
 
 
 
 
 
 
 
 
その通りです。また、e−Businessを視野に入れるとき、携帯電話と同時に考えなければならないのが、CVS(コンビニエンスストア)との提携です。人口10万人あたりのCVS店舗数は21店舗と店舗数が米国(米国は10万人あたり10店舗に満たない)と比較しても多く、営業時間が長い為、e−BusinessにおけるインフラをCVSが担うと考えられています。具体的には、インターネットショッピングを通じて購入した商品の受け渡しや支払を、CVSを通じて行うことが数年のうちに当たり前になるでしょう。
 
繁田
 
この2つを結びつけると将来どんな形になるのですか
 
今野
 
 
 
 
 
 
お客様は携帯電話を通じてインターネットにアクセスし、データを収集する。お客様は必要とあれば携帯電話からカーナビや家庭用TVにデータを転送し内容を確認の上、比較購買を行う。気に入れば、携帯電話から発注し、その商品の受取と支払を、夜遅くまで営業している近くのコンビニで行うという図式です。
 
繁田
 
今までのやり方が通用しなくなる部分も出てきますね。
 
今野
 
 
 
 
向こう10年から20年程度は、このようなIT(情報技術)を駆使する企業が優位性を高めると思います。しかし、IT技術は道具であり、行き渡ってしまえれば格差も薄れてきます。その後は、人間性を重視する動きが強まるかもしれません。
 
繁田
 
 
先生がいつも言っておられる全社的な価値観の提示を通じてお客様との信頼関係を築くことが大切だというやつですね。
 
今野
 
 
 
 
お客様は忙しいのです。当社のフィルター通して厳選された豊かな生活を過ごす選択肢をお客様に提示することが大切です。その努力を怠ってはなりません。大企業といえども「何でもあるが何もない」といわれる店舗は衰退あるのみです。
 
繁田
 
 
 
 
 
IT技術の活用とお客様との信頼関係の強化、お客様の豊かな生活を過ごす為の商品やサービスの提供、難しい問題ですがチャンスと思い取り組む姿勢が大切なのですね。ところで、私の生活を豊かにする為に、どこの通信関係の株を買えばいいのか教えて下さい。
 
今野
 
 
………
 
               (中小企業診断士/五十嵐 雅文)



インデックスに戻る