新入社員は改造されたか (99年12月)

(社) 中小企業診断協会富山県支部

工場主の繁田氏が新人の繁太君に怒鳴っている処に、顧問診断士の今野氏が現れた。

繁田 イヤ〜!醜態をお見せしてしまいまして・・・。
 
今野 朝からビールでも飲まれましたか?口から泡を吹き出して・・・。
 
繁田 イヤ、イヤ、お恥ずかしい。3回もオシャカを作ったもんですから、自然と声が大きくなりまして・・・・。指示したこと以外はしないし、困ってます。
 
今野 3回ということは、2回怒鳴っても効果がなかった訳ですね。怒鳴れば社長はストレスが解消できても、社員は逆に溜まるだけですよ。
 
繁田 どうしたらいいもんでしょうか?繁太君は無欠勤で真面目なのですが、無口で何を考えているのか、よく解らない点が多いですね。
 
今野 真面目であれば救い道がありまよ。繁太君は現代新人の典型ですが、少子化時代で子供がすべきことを親がやってる我々の年代にも責任がありますね。そうであれば、企業(社会)で改造していくしか道はないでしょう。
 
繁田 確かに、登校・下校の送り迎えまで親がやってる現状ですからね。
 
今野
 
 
 
 
少しお気付きのようですね。繁太君の場合は、失敗毎にその原因と対策を書かせて提出させてみたらどうでしょうか。或いは、ある課題を提起してその対策を3つ提案させるのも良いかもしれません。
 
繁田
 
 
書かせることや3つも提案させることにどんな効果があるのでしょうか?
 
今野
 
 
 
 
熟考しなければ読む人が理解できる記述ができない事。1つの案だけですと過去の経験から考えた対策、2つの案であれば1案を若干変更した対策、3つ目になりますと発想を変えないと対策が出てこない事になりますね。
 
繁田
 
 
なるほど「熟考」と「発想」の訓練ですか。丁度今、一つ課題を抱えていますので、彼にやらしてみましょうか?
 
今野
 
 
それはいい機会ですね。これが「怒鳴る」(萎縮)と「叱る」(育成)の違いですし、「詰問」と「質問」の違いともいえますよ。
 
繁田
 
 
耳が痛いですね。もう一つ、無口に何かいい方法はないものでしょうか?
 
今野
 
そうですね。現在、朝礼はどのようにしておられますか?
 
繁田
 
私から業務連絡や注意事項などの話をしていますが・・・。
 
今野
 
 
 
 
それでは、「社員持ち回りの朝礼」をやってみられたら如何でしょうか。その日の担当者が3分間スピーチをするやり方です。社長が朝礼を独占している場合は、社員が馬耳東風になっているケースが多いですね。
 
繁田
 
 
 
そういえば、私も同じ話を何遍もしていることが多いですね。ところでその持ち回りの朝礼ではどんな効果が出てくるのでしょうか?
 
今野
 
 
 
 
 
 
担当者は、話のネタの情報収集をすることになりますし、3分間で話す段取りも考えることになります。無口、口べたであっても順番がくれば話をしない訳にはいきませんので、回を重ねる毎に話力が向上してきます。社員の相互理解も深まりますし、社長が社員の新しい側面を発見することも多いですね。
 
繁田
 
なるほど、効果が期待できそうですね。
 
今野
 
 
 
これに社是や安全目標などの指示唱和を組み入れたり、5S、3S、3ムなどの目標を月別にテーマにした3分間スピーチも効果が期待できると思います。
 
繁田
 
早速、来週から取り入れてやってみます。
 
今野
 
 
 
社長は社員のスピーチに首を突っ込まない我慢がおできになりますか?新入社員に替わって私が社長の口にガムテープでもお貼りしておきましょうか?
 
繁田
 
おなじ貼るなら1万円札で・・・。
 
今野
 
 
・・!!
 
                 (中小企業診断士 平野昭夫)



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