イノベーション (99年8月)

(社) 中小企業診断協会富山県支部

企業団体のある「飲み会」での企業家繁田氏と経営コンサルタント今野氏との会話の一こまである。

繁田 先程も向こうの方でそうだったのですが…、今どきの「飲み会」のお酒はおいしくないです。
 
今野 どうしてですか。
 
繁田 かつては不振企業が少なかったが、最近は大部分が不振で日頃は涼しい顔をしているが、お酒の力で本音がもろに噴出し、右の話も左の話も売上減の赤字話しばかりです。
 
今野 確かに当センターニュースでも、鉱工業生産指数については、H10年1月及びH11年1月の対前年比▲8.0%及び▲4.9%であり、百貨店販売額については、H10年2月及びH11年2月の対前年比▲7.2%及び▲4.3%となっています。
 
繁田 やはりそうですか…、どうしたらよいものでしょうか。
 
今野 企業経営上の即効薬があればそれを飲めばよいわけですが、それが無ければその視点を中期・長期に置くことによって光明が見えてくるはずです。すなわち、かかる状況において、自社は何をすべきか真剣に考えてみる必要があります。
 
(1)既存製品が現在・将来のユーザーに、いかなることを提供しているか。
(2)自社の比較優位性はどこにあるか。
(3)顧客の一層のシビアなニーズはどこにあるか。
(4)それは合理化なのか、高度化なのか、スピードなのか、低価格なのか。
 
このことから、スケール大きく構え、いかなる差別化を進め、いかなるイノベーションを行うべきか考えなければならないですね。
 
繁田 なるほど。そういえば、ここに言う差別化とは、差異・特質・特徴・異質・優位・超越化ともいわれ、マーケッティング志向にもとづくつぎの差別化要素を展開していくということですね。
 
(1) 製 造 −(1) 企画 (2) 設計 (3) 製造
(2) 販 売 −(1) 流通 (2) 価格 (3) 営業
(3) ターゲット −(1) 製品種 (2) 価格帯 (3) 客層
 
今野
 
 
そのとおりです。よくご承知で…、だから繁田企業が勝ち組に入っているのですね。
 
繁田
 
いやいや、お恥ずかしい。
 
今野
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
なお、この差別化のみでは未だに弱さが温存されているので、加えて、力強くつぎのイノベーションへの取り組みが必要であります。イノベーションは、革新的で改革を伴い高い戦略性を有しており、つぎのようなイノベーション要素が考えられ、それぞれの展開とその結び付きによる相乗効果の発揮が望まれます。
 
(1) 新製品開発 −(1)新素材品  (2)新品質品 (3)新機能品
            (4)新低価格  (5)新部門   (6)新分野
            (7)新事業
 
(2) 新製法開発 −(1)新設計・仕様  (2)新時間短縮
            (3)新工程短縮   (4)新標準化
            (5)新良品化
 
(3) 新市場開拓 −(1)新販売形態  (1)新販売ルート
            (3)新地域      (4)新客層
 
繁田
 
 
 

 
ここに相乗効果とは、差別化については、各製造項目・各販売項目および各ターゲット項目のいくつかをからめ、イノベーションについては、各新製品項目・各新製法開発項目および各新市場開拓項目のいくつかをからめ、さらに両者を相乗させることですね。
 
今野
 
そのとおりです。
 
繁田
 
 
 
 
うーん、さすが。これを応用すれば商業にも当てはまりますね。企業家の閉塞感が吹飛んぢゃいますね。元気が出て来ました……。
 
                            (北崎 進)



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