■女性を交替制の深夜勤務に就かせる場合の留意点(99年7月) |
(社) 中小企業診断協会富山県支部 |
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●繁田 |
今回の労基法改正で、女性も深夜労働が解禁になったと聞いていますが、交替制で深夜に女性を就業させる場合の留意点について教えてください。 |
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●今野 |
おっしゃるとおり、平成11年4月から女性の時間外・休日労働および深夜業、つまり深夜業というのは午後10時から翌日午前5時まですが、これらに関する規制が撤廃されました。ご質問に対して、深夜業に女性を就業させる場合の施設面での注意点と人事管理上の留意点に分けて、事業主が配慮すべき事項を、労働省の指針を中心にその他の法規制などにより説明したいと思います。なお、労働省の指針とは、正式には「深夜業に従事する女性労働者の就業環境等の整備に関する指針」と言います。 |
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●繁田 |
施設面では、どのようにすればよいのですか。 |
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●今野 |
事業主は、女性が深夜に通勤する際の安全を確保するように努めなければなりません。たとえば、送迎バスの運行や従業員駐車場の防犯灯整備がこれに当たります。女性従業員用の駐車場を工場・社屋の近くに設置したり、防犯の観点から敷地内の外灯を増やすことも有効でしょう。また、バスや電車の公共交通機関の運行に合わせて、勤務時間を設定するという配慮も必要です。 |
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●繁田 |
そうですか。通勤の交通手段に関係することですね。施設面では、このほかにありませんか。 |
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●今野 |
仮眠室や休養室などの整備の問題があります。女性が安心して働けるような環境を整備することが必要です。労働安全衛生法の規定により、睡眠や仮眠を与える場合には、男性用と区別した女性専用の仮眠室を設置しなければなりません。また、トイレや休養室も男女区別して設置しなければなりません。 |
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●繁田 |
人事管理面では、どうすればよいのでしょうか。 |
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●今野 |
現在雇用している女性を新たに深夜に就業させる場合、まず、子供の養育や家庭の介護・健康状態などに関する事情を聞き、これに配慮するように努めなければなりません。また、小学校入学前の子供を育てる者または要介護状態にある家族の介護をしている者から請求があった場合には、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、深夜業をさせることはできません。ただし、日々雇用されている者、勤続1年未満の者、保育・介護ができる同居の家族がいる者、1週間の所定労働日数が2日以下の者、所定労働時間の全部が深夜にある者は、除外されています。もちろん、労基法において妊産婦から深夜業に就くことを拒否された場合は、深夜業をさせることができません。 |
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●繁田 |
健康診断などは、どうなんですか。 |
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●今野 |
深夜業に従事しようとする労働者を雇い入れるとき、または深夜業へ配置換えを行うときには、医師による健康診断を行わなければなりません。健康診断は、6カ月以内ごとに1回、定期的に行わなければなりません。健康診断の結果、必要があると認めるときは、深夜以外の時間帯における就業への転換や労働時間の短縮などの措置をとらなければなりません。 |
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●繁田 |
安全の確保としては、具体的には何をすればよいでしょうか。 |
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●今野 |
業務の遂行に当たっては、安全を確保する必要があります。周囲に人がいない状況では、女性1人が作業したり、男性ばかりの中で女性1人が作業したりすることは、避けように努めなければなりません。 |
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●繁田 |
そのほかに、どのようなことに注意しなければなりませんか。 |
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●今野 |
就業規則や36協定が女性の深夜業を禁止していれば見直すこと、望まない女性には深夜業を強制しないこと、深夜労働に対しては通常の賃金の2割5分以上の割増金を支払うこと、女性が深夜業の制限を請求し、または事業主が深夜業の制限を受けたことを理由に不利益な扱いをしないように配慮することなどが、挙げられます。 |
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●繁田 |
いろいろと厳しいんですね。 |
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●今野 |
安全の確保などに配慮を怠ったまま女性を深夜業に就業させ、事故が起こった場合には、事業主の責任が問われることになります。過度な深夜業は、健康に影響を及ぼす可能性があることを認識し、適切な雇用管理を行う必要があります。 |
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●繁田 |
どうもありがとうございました。 (指中 恒夫) |