
| ■客の期待を超えるとは 〜違いのわかる店づくり〜 (99年6月) |
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(社) 中小企業診断協会富山県支部 |
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| ●今野 |
繁田さん、難しい顔をなさっていますが、悩み事ですか? |
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| ●繁田 |
品揃えのことで、ちょっとね。実は先日、息子のスニーカーを大型専門店に買いに行ったんです。息子の足はサイズが大きくて、近所の靴屋にも無いし、大型店へ行けばあると思って行ったのですが。 |
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| ●今野 |
なかったということですか。 |
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| ●繁田 |
ええ、取り寄せになることまでは仕方ないんですがね。 |
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| ●今野 |
何か不満でも。 |
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| ●繁田 |
取り寄せるということは、入荷するまで何日か、かかります。待たせたうえに、定価販売と言うんですよ。他の在庫品は皆、何割引かで売っているのにネ。それで考えたんですよ。お店の品揃えって何だろうと。どこの店だって売場スペースには限りがあり、なんでもかんでも並べられない。仮にそれができるほど大きな売場でも、お客様は商品を選びにくくて満足されないと思いますしね。 とにかく、全てを置けない売場で、お客様を満足させる品揃えと言うか、飽きさせない品揃えというのは、どうすればいいのか、ということなんですが。 |
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| ●今野 |
町田さんなら、どうしますか。 |
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| ●繁田 |
お店の性格や、考え方によるとは思いますがね。流行のエブリディ・ロー・プライスを売り物としているのなら、ある特定ブランドについては、全てのサイズを揃えるくらいはできるのでは、と思いますが。まさか全メーカーのものを、揃えろとは言いませんがネ。 それに同一ブランドならそれは、サイズが違おうが、お取り寄せであろうが、率は違っても値引きは同じようにすべきではと思います。 |
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●今野 |
他メーカーや他ブランド品の品揃えは、どう考えるんですか。 |
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●繁田 |
全部は置けません。スペースの問題がありますでしょう。規模の大小に関係無く、どんな品種、品目だって、市場に出回っている全商品を一堂に並べるなんて芸当はできないでしょう。要は、その店においでになるお客様が満足される品揃えをするということになりますが。 |
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●今野 |
それじゃあ、来店される全てのお客様が満足される品揃えというのは何ですか。 |
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●繁田 |
うーん。そこがね。何でもありの店でなければ当然、店のほうで特定のお客様と商品に絞り込むことになりますよね。商品も客層も、店側が選別して決めるということかな。商品やサービスは、最終的には、お客様に合わせることになりますが。 |
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●今野 |
ですね。自分のお店にとっての、お客様というのは誰なのかを明確にすることが第一。そのうえで、そのお客様に対して、自分の店はどんな商品やサービスを提供することができるかを考えることです。 よく固定客づくりと言われますが、それはそのお店のファンを作ることであり、そのファン一人一人に対して、どんな商品やサービスの組み合わせを提案すれば満足していただけるかと言うことを継続して考え、お店に実現していくことなのです。 |
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●繁田 |
難しい話になりましたね。 |
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●今野 |
先ほどの靴屋さんの例では、どうですか。人間の足と言うのは、個人差が大きいうえ、同じ日でも右足と左足では違うし、右足一本でも朝方と夕方では、大きさが変わると言います。仮に1ミリサイズに区切って靴を造ったら、売れるでしょうか。それでお客様は満足し、お店の経営は成り立つでしょうか。 |
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●繁田 |
靴の職人が、お客様一人一人の足に合わせてつくるのなら別でしょうがね。 |
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●今野 |
靴にこだわりを持つお客様ばかりならね。いずれにしても、全てのお客様を相手に出来る商売と言うのは無いんですよ。店に来ていただきたいお客様を特定し、その生活シーンにあった品揃えやサービスを提案し、繰り返し満足していただくこと。これなら小型店でも、お客様の期待に沿ったその店独自の主張や提案を持てば、やっていけるんです。 |
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●繁田 |
なるほどネ。お客様の期待を裏切らない店づくり、ということですか。 |
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●今野 |
町田さんも言われたように、最終的にはお店のポリシーとか、経営者の考え方ひとつに行き着くんです。同じ商品を同じように販売していれば、いずれ価格競争になり、資本のある者だけが生き残ることになります。 他店がマネのできない店づくりをすることとよく言いますが、店舗形態や品揃えなど目に見えるものの裏にあるソフト、つまり革新的な発想、モノの考え方の違いと言うことです。 |
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●繁田 |
自分の考え方を変えることのほうが、大仕事ですね。とにかく、大変だ。 (羽田野 正博) |