■労働基準法の改正について (99年5月) |
(社) 中小企業診断協会富山県支部 |
社長の繁田さんが、コンサルタントの今野さんに相談したときの話 。 |
●繁田 |
昨日労働官庁から労働時間の照会と呼出しの連絡が入ったのですが、何かむつかしい問題ありますか。 |
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●今野 |
そうですね、既に施行されている週40時間労働の実施状況の確認とその他労働基準法適用についての指導を兼ねているようですね。 |
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●繁田 |
あっそうそう、今度、労基法が改正されたそうですね。どのような趣旨ですか。 |
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●今野 |
はい、今回の労働基準法の改正は、就労形態の多様化を念頭においたものが多く含まれており、今後の労務管理のあり方にも大きな影響があるだろうと思われます。 |
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●繁田 |
目玉となる改正はなんですか。 |
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●今野 |
労働の時間という量の管理から質の管理への変化の裁量労働制の適用対象業務の拡大ですね。 |
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●繁田 |
内容はどうなりますか。 |
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●今野 |
この改正だけ来年からの施行になりますが、現行の11業務に新たに、本社等の中枢で、企画立案、調査および分析の業務を自らの裁量をもって遂行するホワイトカラーも対象に追加されたんですが、条件として労使委員会を設けて、対象者の範囲、みなし労働時間などについて全会一致で決議する必要があります。 |
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●繁田 |
営業マンも該当しますか。 |
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●今野 |
残念ですが営業は対象業務にはなりませんね。いわゆるプロジェクトチームの業務がピッタリ当てはまりますね。又適用には就業規則の改訂も必要です。 |
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●繁田 |
ほかに就業規則を改訂する必要のあるものはありますか。 |
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●今野 |
年次有給休暇の付与日数の引上げです。 現行では入社6ヶ月後に全労働日の8割以上出勤した者に10日の年次有給休暇が付与され、その後勤続年数1年につき1日の年給を加算し最大日数は20日までとなっています。 今回の改正は、この最大日数の20日の変更はありませんが、この20日到達する年数を短縮するもので、入社後3年6ヶ月目からは1年ごとに2日ずつ追加していくことになります。 |
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●繁田 |
わかりましたが、これでまた働いてもらう日数が減りますね。困ったなあ |
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●今野 |
繁田さんの会社は私のみたところ、月末が近づくと忙しく又季節的にも閑繁の差があるようですが。 |
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●繁田 |
はい。ご指摘のとおりで多忙のときは週40時間のため、無理がかかるんですよ。 |
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●今野 |
週40時間労働制の方法として変形労働時間制を採用してはどうでしょうか。 |
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●繁田 |
大変むつかしい制度と聞いていますが。 |
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●今野 |
たしかに複雑ですが今回の改正でだいぶ使いやすくなりましたよ。 1ヶ月単位の変形労働時間制では、実施の手続として労使協定でもよいことになりましたし、季節による閑繁の差のある業種で採用されるケースの1年単位の変形労働時間制では、所定労働時間の上限が現行の「1日9時間、1週48時間」から「1日10時間、1週52時間」に緩和されたこと、対象期間の区分が現行では3ヶ月以上から、1ヶ月以上に緩和されたので、ずいぶん使いやすくなりました。もっとも強化された |
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●繁田 |
検討してみます。いずれ就業規則も改訂しますのでご指導ください。 |
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●今野 |
はい。 (金山 順一) |