■ロイヤルカスタマー (99年1月) |
(社) 中小企業診断協会富山県支部 |
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●町田 |
先日、店内で実施したアンケートの結果がでました。先生の指導のおかげで、お客様の当社に対する満足度は高い結果となり、ほっとしているところです。 |
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●今野 |
安心するのはまだ早いですよ。米国での調査によると、満足していても40%の顧客が店舗を替えるという結果がでています。顧客満足度調査はある時点での結果にすぎません。顧客満足はプロセスであって、ゴールではないのです。それを積み重ねることによって、継続的な態度である「顧客ロイヤルティ」に高め、ロイヤルカスタマー作りまで発展させなければなりません。 |
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●町田 |
ロイヤルカスタマーって何ですか。 |
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●今野 |
生涯顧客、真の顧客という意味です。簡単にいえば、このものを買うなら生涯にわたり当社を利用するお客様をさします。 |
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●町田 |
先生がいつもいっておられる「ビジネスの利益は、安売りや高いコストで行われた広告につられてきたワンタイムバイヤーからではなく、満足したリピート客から来るものだ。こういうお客様を一番大切にしなさい」ということですね。 |
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●今野 |
その通りです。ロイヤルカスタマーを作るということは、その企業や店舗への固定化と顧客の消費支出に占める高いシェアーの両方を実現させることです。また、ロイヤルカスタマーは、価格指向ではありませんので、売り上げが伸びれば、利益も伸びていきます。広告も必要なくなり、ロイヤルカスタマーがクチコミでお客様を連れてきます。 |
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●町田 |
どうすればロイヤルカスタマー作りができるのですか |
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●今野 |
ある調査機関の報告によれば、小売店選択の要因は、顧客は1位に「信頼」を上げ、多くの小売業経営者が1位にあげた「価格」は5位となっています。この信頼とは、「自分は忙しいから、吟味をしている時間がない。だから商品も価格もサービスも自分を裏切らない、お任せできる店舗が必要なんだ」ということを意味しています。 |
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●町田 |
つまり、品揃え、鮮度、適正な価格、レジの応対、クレーム時の対応等を今以上に重視し、信頼を作り上げてゆくということですね。 |
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●今野 |
これらのことを現場で実現してくれるのは、従業員です。実は、ロイヤルカスタマー作りの根本は、企業理念とロイヤリティの高い従業員づくりなのです。 |
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●町田 |
なぜ、企業理念なのですか。 |
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●今野 |
正しい企業理念が従業員に浸透して、企業文化が生まれます。もの、技術、サービスなどを売るビジネスには必ず競合が現れますが、目に見えぬ企業文化は、まねのできない本当の競争力です。それが、真の差別化の基礎となり、大きな差をつけるのです。 |
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●町田 |
企業理念がなくても商売はできると思いますが。 |
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●今野 |
企業理念に基づいて長期・短期の経営目標、戦略、ストアコンセプト、品揃え、価格、店作り、従業員の待遇・教育、取引業者の選択などが決められていくのです。逆にみれば、正しい企業理念なしに正しい店舗展開はできません。 |
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●町田 |
企業理念が従業員に浸透し、企業文化が生まれ、各従業員が企業理念を現場で具現化することによって、それに共鳴したお客様がロイヤルカスタマーになるということですね。 |
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●今野 |
そうです。企業理念を従業員に伝え、ロイヤルティの高い従業員を作ることがロイヤルカスタマー作りにつながるのです。また、企業理念を従業員に伝えることは、経営者が自ら、根気よく、愛情を持って、継続して、行うべきです。 |
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●町田 |
うちの従業員はレベルが低いから、うまく伝わるかな。 |
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●今野 |
トーマス・ドレーヤーは「科学者が発見したことの一つに、褒められて育った子供は、叱られてばかりいた子供より知的になるということがある。もし、あなたの従業員が少々知性に欠けるとしたら、それは多分、あなたが叱ってばかりいるためであろう。褒めるところに創造は育つ」と言っていますよ。 (五十嵐 雅文) |