中小企業診断協会／富山県支部

■不渡り手形　(98年10月)

(社) 中小企業診断協会富山県支部

繁田社長が顔色を変えて、今野氏の事務所へ駆け込んできた。

●繁田			不渡りを食っちゃいましたぁ。
●今野			ほう、それは珍しいものを食べられましたね。で、お味の方は？
●繁田			そりゃもう、苦いなんてもんじゃあ・・・。いえ、冗談を言っている場合ではありません。どうしたらいいでしょうか。
●今野			どうしようもありませんな。諦めて、今度のゴルフの話でもしましょうよ。
●繁田			落着けと言われるんですね。でもだめです。なんとか回収できませんか。
			「回　収」
●今野			フム、では、いくつか質問に答えていただいてから、即行動に移しましょう。　・この不渡りが1回目か2回目か・割引きしたか・まわし手形にしたか・裏書き人からのものか・保証人の有無・預託金の有無　これらによって取立てが異なりますが、速いもの勝ち、交渉力の差がものをいいます。相手の資産状況や預託金の調査についてただちに営業担当者、経理担当者に指示しましょう。資産について裁判所へ仮差押えの申立てをすることも大切です。しかし、回収には困難が多いことは当然分っておられますよね。
			「資金手当」
●今野			さて、肝腎の話に移しましょう
●繁田			今後の支払ですね。
●今野			以前にお話した倒産防止共済には加入しておられましたね。
●繁田			はい。そういえば随分長いこと掛けています。
●今野			あれは、いざ、ことあれば、無担保・無保証人・無利子で、掛金総額の10倍まで借入が可能です。スピーディさも売物の一つなのですが、今度の場合、御社の支払い日は間近なのですか。
●繁田			はい。じつはあと一週間しかないのです。
●今野			では、こうしましょう。まず、共済金の借入を申込みます。これは後日確実に実行されるはずのものですから、それを担保としていつもの銀行から融資してもらいましょう。事情を説明すれば速やかに進めてくれますよ。無利子が魅力の共済とはいえ、昨今の低金利ですから、我慢の範囲でしょう。
●繁田			では、当面の支払はなんとかクリアできますよね。やれやれ。日頃、銀行との付き合い方をいろいろ言っておられた意味もわかりました。
●今野			もう一つ言っておきたいことがあります。与信管理のことですが甘くはありませんでしたか。普通不渡りを出すような会社には、必ず予兆があるはずです。手形サイトの変更、ジャンプの依頼、取引先の変更、取引条件の変更などなど・・・。これらの情報収集、変化への機敏な反応のためにも、日頃の与信管理をシビアにしていかねばいけません。私も今後、さらにお話していくつもりですが。
●繁田			よろしくお願いします。話を聞いたらちょっと気分が楽になりました。それでは、さっきのゴルフの話の続きなぞを・・・。
●今野			何言っているんですか。御承知のとおりあれは方便です。この緊急時に呑気なことを言ってるとビンタもんですぞ。
●繁田			その手形も痛そう！　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（布目　大剛）

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