週40時間労働制への処方箋 (98年9月)

(社) 中小企業診断協会富山県支部

経営コンサルタント今野氏が、経営顧問契約にもとづいて定期訪問したところ、なぜか繁田社長は両手で頭を抱えふさぎ込んでいた。

今野 こんにちは。あれ、社長、どうしたんですか。
 
繁田 いや、はずかしい・・・。ちょうどよかった。週40時間制にどう対処すべきでしょうか。労基法では、小規模な当製造業においても平成11年4月から完全実施が義務づけられているんです。
 
今野 そもそも、高度情報化社会への進展に伴って社会が必要とする総労働時間は短縮されつつあります。もともと、人類のしあわせのために労働時間短縮が望まれており、労働機会を分け合うワークシェアリングは自然な帰結なんです。それが世界の趨勢となっているところです。
 
繁田 なるほど・・・。
 
(1)週休2日制
(2)1日の所定労働時間の短縮
(3)変動労働時間制
(4)フレックスタイムの導入
(5)年末年始夏期休暇の増加
(6)以上の組合せ
 
によって適する方法を採用することになることは承知しているんですが、実質的にベースアップになることも問題でして・・・。
 
今野 そのとおりです。本来、経営環境は刻々と変化し、経営目的達成のためにはこれにスピーディに対応してゆかねばなりません。この環境変化要因には、国際化・老齢化などへの積極的対応要因のほかに、週40時間労働制、公害防止などへの消極的排除要因があり、両者共に経営目的達成のために重要なんです。
 
繁田 そうですね。いつまでも被害者意識に囚われて消極的にもんもんとしていてはダメですね。考え方を変えなくちゃ。思うに
 
(1)パソコン化・機械化、標準化・単純化・専門化、ムダ・ムリ・ムラの排除
(2)社内外講座・自学自習・調査研究創造の教育訓練
(3)職能給・能力主義・成果主義・年俸制への移行
(4)実態分析によって効率品を強化し非効率品を排除する
(5)新事業・新部門・製品開発に積極的に取り組む
 
と共に、他方において、
 
(1)従業員・パートを増やす
(2)残業を増やす
(3)仕事を外注に出す
 
などで対処しなければね。
 
今野 さすがに繁田社長。これに加えて、従業員を捲き込んで、これが実質的に賃金ベースアップになることを認識させ、その消化のための効率化に努めるよう、担当業務につき、
 
(1)計画−実行−反省へと改善する
(2)常に創意工夫を重ねる
(3)設備・機械・消耗品を大切にする
(4)電気・電話・ガソリン・時間を有効活用する
 
などに士気を鼓舞し、さらに、
 
(1)先輩から良いところを積極的に学び
(2)社内外教育訓練に積極的に取り組み
(3)書籍などによって自学自習し
(4)調査し研究し創造活動を行うよう能力開発を推奨すること
 
が大切ですね。
 
繁田 なるほどね・・・。この週40時間労働制を逆手に取って、従業員の定着率をより向上させると共により優秀な人材の新規採用を可能せしめ、この機会に、この実質ベア以上の生産性向上を達成してやろう−−と。
 
                            (北崎 進)



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