店を磨く、人を磨く、心を磨く (98年6月)

(社) 中小企業診断協会富山県支部

今野さんが、町田社長を訪ねてたところ、社長はトイレ掃除の真っ最中だった・・・

今野 社長さん自らトイレ掃除とは気合いが入っていますね。
 
町田 いやー、ここんところヒマなので何かできることをしようと思ってたんです。カネをかけずにね。たまたま、近くのコンビニでいつも床みがきやガラスふきをしているのを見ていたのでウチもやらなきゃと思ってね。
 
今野 掃除ぐらいは、いつもやってたことでしょう。
 
町田 お恥ずかしいことに、これまで従業員任せでね。いざ、自分でやってみると、これが意外に骨で「たかが掃除、されど掃除」というのが実感ですよ。
 
今野 製造業での仕事の基本に5Sというのがあって、これは整理、整頓、清潔、清掃、躾の五つなんですが、小売業でも基本的な、できていて当たり前のことになっているんですよ。
 
町田 掃除とか、整理、整頓というのは、やればやるほど粗が見えてくるというか、細かい所が気になるというのか・・・。
 
今野 だから、継続は力なりと言うじゃないですか。一回きりではなく計画的に、継続的にやらないとキレイになりません。
 
町田 それに、言われたから、きまりだから、仕方なく、イヤイヤという側面もありますね。
 
今野
 
 
 
 
掃除が大事な仕事という意識づけが足りないんですよ。なぜ掃除が重要なのかを、お客様の立場に立って理解させることです。もちろん、社長さんの率先垂範も不可欠です。誰もがやりたがらないトイレから始めるというのは良い手本ですよ。
 
町田
 
 
頭ではわかっているんですがね。いつもいつも私がという訳にはいかないんですよ。
 
今野
 
 
 
トイレは店の心を写す鏡という言葉がある位に、トイレの汚い店に繁盛店はありません。トイレの掃除の仕方をマニュアルにして、誰にでもできるような体制づくりをすることです。
 
町田
 
 
また、マニュアルですか。作るのも面倒そうだし、作っても誰も使わなかったりして。
 
今野
 
 
 
でも、いつ、どこを、誰が、どんな道具を使って、どのように、どのレベルまで掃除すれば良いのかを決めておかないと続きませんよ。
 
町田
 
うーん、掃除しなきゃならない箇所もたくさんあるしなぁ。
 
今野
 
 
 
 
お店で、掃除が必要なのは、トイレ、ガラス、床などですが、この中のどれか一つをまず徹底的にキレイにする、そのために必要な道具を揃える、置く場所を決める、手順を定める、全員でやってみることです。
 
町田
 
全員でやるというのはどうしてですか。
 
今野
 
 
 
 
 
みんなでやる、汗を流すから一体感も出てくるし、やらなきゃという気にもなるんです。やればやるほど粗が見えると言うより、今まで見えていても気にもとめなかった汚れやホコリに敏感になるという気づきが生まれ、意識や行動まで変るんですよ。
 
町田
 
そんなもんですかね〜。
 
今野
 
 
でも、中途半端はダメですよ。やる時は徹底してやらなきゃ。社長さんも何とかのヒモを締め直してやってもらわなきゃ。
 
町田
 
そこまで言いますか。
 
今野
 
 
まあね。でもトイレをキレイにする、ピッカピカに磨く、磨きあげることで自分も磨くという気持ちになりませんか。
 
町田
 
トイレを磨く、キレイになれば気持ちがいいですからね。
 
今野
 
 
 
キレイな店は従業員もお客様までもが汚さないように気をつけるのでますますキレイになるし、汚い店は輪をかけて汚くなっていきますよ。
 
町田
 
 
店をキレイに磨きあげることは、自分も、心も美しく変えるということですか。
 
今野
 
 
そのとおりですよ。下手な教育訓練をするより、徹底して、全員で掃除をすることがよほど効果的です。
 
町田
 
 
やってみようという気になってきましたよ。
 
                          (羽田野 正博)



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