取引先はだいじょうぶか (98年5月)

(社) 中小企業診断協会富山県支部

数人の社長をメンバーとする経営勉強会に出席した経営者繁田さんが翌日経営コンサルタントの今野さんを訪ねたときの会話

繁田 ここのところ景気が悪いという暗いニュースが多い中で、メンバーの中にも取引先が不渡りを出して困っている社長がいましたが、世間の状況はどうですか。
 
今野 昨年は中堅ゼネコンをはじめ上場企業の倒産は10社を超え年間の倒産件数も16,300社にもなったようです。その倒産原因も不況型倒産が65%を占めかつ連鎖倒産も増加しておるので、取引先に対する危機管理がこれまで以上に重要になりましたよ。
 
繁田 そうですね。我々も日々の売上確保に懸命になっていて、危機管理は手うすになっていましたね。そこで先生、危ない取引先の見分け方ですが、具体的におしえてください。
 
今野 経営の三要素「人」「もの」「金」そして「情報」の面からみると、先ず「人」の面では取引先の社長や社員の動きがポイントです。
 
繁田 どんな動きに注意すべきですか。
 
今野 社長が不在かつ行先不明が多くなるのは金策のためであるケースがあること。又現状打開のため新事業を場当たり的に始めるなどの動き。そして経営状態は社員の様子にダイレクトに反映するものであるから、社員の働く意欲がみられず、会社のグチをこぼしたり、有能な社員の退職や場当り的人事が行なわれてないかなどですね。
 
繁田 「もの」の動きではどうですか?
 
今野 繁田さんにとっては売上(取引先にとっては仕入)が急激に減ったときは当然商いが減っていることはわかるが、注意したいのは反対に仕入量が急激に増えている場合です。この時季業況の悪化により、今までの取引先を変更して、とにかく仕入れるだけ仕入れることが先決になっているかもしれない。そこで(1)納期が急である(2)通常の仕入商品と異なるものである等はチェックすべきことである。一方商品在庫の増大、換金のための乱売を始めるなどの動きに注意して下さい。
 
繁田
 
 
取引先への売上が突然増加するときは喜んでばかりいられないということですね。「金」の面ではどうですか?
 
今野
 
 
 
 
支払日、支払条件の変更は勿論大事なポイントですが、手形で先方の取引先とは考えにくい払出手形に裏書されている手形が廻るとき、又メインバンクの変更はその原因について特に注意したいものです。
 
繁田
 
銀行の「貸し渋り」で銀行を変えることもあると思いますが。
 
今野
 
 
 
勿論その場合でも当面の取引はよいとしても、新規先としての扱いと長年のメイン取引先とはおのずと銀行の取扱が異なるものなのですよ。
 
繁田
 
 
全般的に注意する先とおかしいかな?と感じた先ではどうですか?
 
今野
 
 
 
 
 
 
 
 
 
最近の倒産は(1)本業不振で収益悪化(2)過去の過大債務の負担(3)メインバンクがないこと、が共通しており、これらに関連する取引先に注意を向け、不審に感じたら直接現地確認と疑問点をズバリ聞くこと。情報の量が早期対応の決め手であるから同業者間での情報交換、信用調査機関の利用も大いに役立つのである。
 いずれにしろ本業に力を入れると同時に取引先への与信管理に十分に注意をはらい、リスクをいかに最小限に止めるかは正に自己責任の問題です。
 
繁田
 
 
 
社員全員にも、注意の目をもって当るよう、この時季大事であることを言いましょう。ありがとうございました。
 
                          (金山 順一)



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