ピグマリオン効果 (97年11月)

(社) 中小企業診断協会富山県支部

先日、部下の育成について繁田社長と話し合った今野さんは、その後の会社の様子を見たくなってフラリと立ち寄ってみた。

繁田 おや、これは先生。今日もグッドタイミングでおいでですね。丁度コーヒーを入れたところですよ。
 
今野 うーん。挽き立てというやつですな。つい引き寄せられましたよ。ところで、この前から人事や労務の話ばかりしてきましたが、ねらいどおりに動いてきている様子ですね。従業員の皆さんが、以前にも増していきいきと仕事をしておられる感じがします。
最近の雇用環境をみると、中小企業が良い人材を確保して内部から質的向上を図る好機だといえます。ですからついこのあたりに力が入ってしまうんです。
 
繁田 私もそのつもりで取り組んでいます。コーヒーを飲みながら続きを聞かせてください。
 
今野 それじゃ、ひとつ茶飲み話に「ピグマリオン効果」っていうのをしましょうか。
神話なんですがね。昔、キプロスのピグマリオンという王様が、あろうことか人形に恋をしてしまったのです。いくら彼女が美しいといっても、相手が人形では所詮かなわぬ恋・・・の筈だったのですが、王様の激しく深い思いがとうとう人形に生命を吹き込み、めでたくその恋が成就した。という伝説なんです。
 
繁田 どうも私には縁の無い話のようですが。
 
今野 その伝説を基に名付けられた心理学用語が、このピグマリオン効果と言うんです。
さて、もうひとつ。以前、アメリカのある小学校でこんな実験が行われました。I.Q.が同じレベルの子供達を、AとBの2つのグループに分けました。担任の教師には実際のI.Q.値を隠しておき、ニセの情報を与えてAグループはI.Q.が高い子供達、BグループはI.Q.が低い子供達であると思い込ませたのです。さて、その1年後にI.Q.検査をすると、Aグループは実際にI.Q.値が高くなり、一方Bグループもまた本当に以前より低い値になってしまったのです。
 
繁田 ほう。つまりそれは、担任教師の子供達に対する態度や接し方が影響しているということですか。
 
今野
 
 
 
 
 
 
 
 
そのとおり。教師自身の思い込みのせいで、子供達を指導したり教える姿勢が微妙に異なった結果だと言えます。
相手のことを優秀であると信じ込めば実際にその人の能力はアップし、その逆もまたあり得るという心理学の実験結果で、この思い込みによる効果のことをピグマリオン効果と呼んでいるそうです。
さっき、御社の従業員さん達がイキイキしていると言ったのは、どうもこの効果のせいかなと思ったものですから。
 
繁田
 
 
 
 
 
 
 
はあ、そんなものなんですか。そこまで意識して社員と接していたわけでは無いのですが、確かに彼等の潜在能力を信じてはおりました。それなら、我社の社員のレベルアップは約束されたようなものですね。
ところで先生、最近の私はどうも物忘れがひどくなったと思うのですが、これはひょっとして誰かが私のことをバカにしているために・・・。
 
今野
 

 
他人のせいにしちゃ、いけませんねえ。
 
                            (布目 大剛)
 



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