■街づくりと小売・サービス業 (97年9月) |
(社) 中小企業診断協会富山県支部 |
商店街で小売業を営む町田氏と経営コンサルタントの今野氏の会話である。 |
●町田 |
小売業は立地産業だから衰退する地区から撤退し、成長する地区へ移転すればよいではないかという人がいます。しかし、私は昔から商売をさせていただいた中心商店街を捨て難い気持ちでいっぱいです。この努力が小売・サービス業を営む者の責務のように感じますが…。 |
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●今野 |
商店街における経営者は、個店の発展と街づくりの努力が必要です。よく個店の発展のみに目を奪われ、街づくりに無関心な人がいますが、しまいには個店の発展も望めなくなります。 |
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●町田 |
私たちの商店街では、有志が集まり、活性化を目指して商店街をめぐる環境と商店街の現状認識をし、視野を広くするために先進商店街の視察を行ったりしています。しかし、具体的にその先が見えてこないのですよ。 |
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●今野 |
街づくりの進め方について、組織的に街づくり部会をつくり、コンセンサスを形成しながら、活動を進めます。内容的には消費動向と小売業の現状や商圏内の人口問題は言うに及ばず、広い角度からの検討が必要です。 街づくりは、都市づくりで行政の仕事の一端なのですが、地域の人々も積極的に関与すべきです。商店街は「モノを売る店の集まったところ」という常識的な考えを捨てて「生活を楽しむところ、その楽しみを提供してくれるところ」というようにとらえます。多くの街には、時間消費を楽しんだり、感動できるものがありません。感動できる場所にこそ人は集まります。だから「エコロジーコンシャス」「ライフスタイルコンシャス」「コミュニティコンシャス」という3つのキーワードに基づいて、どんな仕掛けをつくろうかと考えています。ある側面からいえば、商業施設をつくる場合は、どうしても人工的な空間をつくることになってしまうわけですが、その創り手である自分たちが予想しなかった反応が出てきたり、非人工的な部分がうけたりすることもあります。それをあえて人工的につくるというジレンマがあって、なかなか難しいものがあります。 |
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●町田 |
私は冨山市に住んでしますが、富山市に話題を移していただけませんでしょうか。 |
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●今野 |
富山駅から中心商店街まで約1.5kmとかなりの距離があります。買い物などで車を使う人が車を降りて歩く距離は200m以内と言われています。だから、JRで市外からやってきて中心商店街まで歩いてショッピンクに訪れることを期待するのは無理な話です。市電やバスの利用は欠かせません。マイカーの人たちには、駐車場は絶対に必要です。1.5kmの中に県庁や市役所、その他の公共施設が沢山あり、城址公園が整備され、歓楽街があり、会合や講演などの会場となるホテルがいくつもあります。また、1.5kmを越えて冨山駅北側に公共機関をはしめホテル・集会場などがあります。これらの場所に集まる人たち、通行く人たちのすべてを対象として、商店街との関係をどうするかがポイントだと考えます。 もちろん、既存の商店街には郊外型ショッピングセンターにはない伝統と風土があり、それを生かすことも必要です。いずれにしても、とにかく街は、若い人が集まらないと駄目なんです。イヤリングをしたり、サングラスを掛けたり、穴のあいたジーンズをはいたりと「健康な不良」が集まるような場所も必要です。 街づくりは、各商店街同士が共同で対応することも、必要なのではないでしょうか。 (指中 恒夫) |