生産管理システムの構築方法 (97年7月)

(社) 中小企業診断協会富山県支部

工場経営者の繁田社長は、徐々に工程を川下分野に垂直展開することで、付加価値を追求しながら会社を大きくしてきた。以下は、繁田社長と経営コンサルタントの今野氏の会話である。

繁田 今野先生の指導のおかげで、工場も大きくなりました。でも、工程の数が増えた結果、工場内のどこをどんな仕掛かり品が流れているのか分からなくなってきました。困ったことです。
 
今野 それは、単に繁田社長の会社も、いよいよ本格的な生産管理を必要とする段階に達したということです。むしろ、喜ぶべきことでしょう。各工程単位での管理の他に、工程横断的な管理業務が必要になってきたんですよ。
 
繁田 生産管理業務なら、各工程の職長がきちんとやってくれています。職長同士が連絡を取り合う安価な方法はありませんかね。先日も、各工程にFAXを設置したんですが、職長達は字を書くのが嫌いでしてね。読むのも嫌いなのか、見ようともしないので困っています。
 
今野 とりあえずは、職長達にPHSを持たせて、敷地内にそれ用のアンテナを1本立てて、内線の連絡網を形成することです。内線ですから、電話料金もかかりませんし、繁田社長との連絡も直にとれます。
 
繁田 なるほど。すぐに実行します。これで悩みは、すべて解決しました。
 
今野 いや、根本的な解決にはなっていませんよ。そろそろ生産管理情報システムを構築する必要があります。
 
繁田 コンピュータ屋みたいなことを言わないで下さい。私は、利益を生まない投資はやりません。
 
今野 利益を生む様なコンピュータ化をすればいい。
 
繁田 そんなことできますか。
 
今野
 
 
 
会社全体として、間接要員を減らす様な形でシステムを構築するのです。その省力化で浮く経費の範囲内で、システムに投資するんです。
 
繁田
 
もっと具体的に教えて下さい。
 
今野
 
 
 
 

 
繁田社長の会社では、既に、経理、給与、販売、購買の各業務はコンピュータで処理されているわけです。生産管理情報システムは、一般に販売系及び資材系とリンクすることで、販売管理や資材管理の業務の側に省力化の余地が生じます。また、職長達の集計業務等の省力化も可能でしょう。ポイントは、統合化メリットを追求することです。
 
繁田
 
 
生産管理情報システム構築の、最も効率的な手順を教えて下さい。失敗は、許されませんから。
 
今野
 
 
 
それなら、同業他社の視察をすることです。できれば、繁田社長の会社のライバル会社と繁田社長が理想とする会社、この2社を視察するべきです。
 
繁田
 
見せてくれますかね。
 
今野
 
 
社長同士の交渉がなくても、技術者同士、或いは従業者同士のルートでもかまいません。
 
繁田
 
あまり気乗りしませんね。
 
今野
 
 
 
それでは、コンピュータ屋をいくつか呼んで、視察のお膳立てをしてもらうしかありません。これは、コンピュータ屋の納入実績を知ることにもなります。
 
繁田
 
 
なるほど。それはいい。すぐに実行します。旅行は好きなんです。
 
今野
 
 
 
 
 
待って下さい。せっかくの機会です。視察に際しては、事前に視察重点を明確にして、視察項目をチェックリストにまとめ、視察メンバーにその視察項目を割り当てて下さい。現地では、説明より、現場や帳票、システム等の見学を優先して下さい。特にコード体系の組み方、現品管理表の実物とその運用ノウハウを吸収しなければいけません。
 
繁田
 
 
なんだかめんどうですね。そうだ、今野先生も一緒にいきましょう。
 
今野
 
 
 
えっ?
 
                          (釣谷 宏行)
 



インデックスに戻る