希望にもえる春 社会人の心得は (97年5月)

(社) 中小企業診断協会富山県支部

縁側でうららかな五月の陽光を浴びながら経営コンサルタントの今野さんが今年新社会人になったばかりの甥の繁太君と話している。

今野

会社に入社して一ケ月、どうだい、調子は。
 
繁太 厳しい就職難の中、やっと入れた会社ですよ。どうであろうと頑張らなくうゃ。
 
今野 その通りだ。当面は何も考えずにただひたすら仕事を吸収することさ。結料をもらいながら実社会の体験をさせてもらっている、とありがたく思うべきだろうね。で、どんな部署にいるんだね。
 
繁太 宮業部ですよ。だけど実際のところ、自分がやりたかった仕事ではなかった。もっと自分の好きなことができるところならよかった。
 
今野 そんな自分勝手な風にはいかないよ。だが、懸命に仕事に没頭しているうちに今の仕事が好きになる、ということもある。繁太君の人間性や能力が認められるようになれば、そのうち自分の希望通りの仕事をさせてもらえるかもね。
 
繁太 でも、もしいつまで経っても自分が思っているようにならなかったらどうしよう。
 
今野 組織での配属は、運の薫し悪しといった面もある。たまたまよい上司に恵まれていたか、市場が成長期にある商品分野の部署だったかどうか、人間関係のよい職場だったかどうかなどだ。
いずれにせよ能力のある人間はじっとしていないものだ。会社の内容が分かった後、自分自身の身の処し方を考える。会社に見切りをつけ、転職したり独立したりする人もでてくるだろそこは会社も抜け目なく人事考課をして従業員の能力や会社への貢献度を見ていて、会社に残ってほしい社員にはそれなりの待遇をするはずだ。
 
繁太 要は会社がいて欲しいと思う社員にならなければらないってことか。
 
今野 その通りだ。しかし、一面では会社に没頭してしまう、いわゆる会社人間になってしまってはだめなのだ。終身雇用や年功序列といった伝統的な日本的風習は崩れつつある。自分を犠牲にして会社に尽くしたから、能力がなくなった後も面倒をみてほしい、などと会社に泣きついてくるような社員は敬遠される。結局、能力の向上を怠っているとそのうち会社の仕打うに対して恨まなければならなくなるだろう。
 
繁太
 
会社に頼り切るだけではだめだということですね。
 
今野
 
 
 
 
 
そうだ。自分白身の生き方についてしっかりした考え方をもつこと。そのためには世の中は今後どう変わるのか、そして社会はどうなるのか。そのなかで自分に求められる能力はどう変わるのか。ときどき立ち止まって自分を総括してみることが必要だろう。
 
繁太
 
 
 
 
つまり、会社に貢献しながら会社に埋没世ず、自分の納得できる生き方を確立していく人間にならねばならないんですね。よくわかりました。
 
                            (崎山武夫)



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