■「キャッシュフロー経営してますか」 (2001年2月) |
(社) 中小企業診断協会富山県支部 |
経営者の町田さんが、経営コンサルタントの今野さんを訪ねての話。 |
●町田 |
先生、近頃書店へ行くと、キャッシュフロー会計とか経営とかの本が大変目に留まるんですが、これは一体どういう意味なんですか。 |
||
●今野 |
そうですね、まずフローとは一定期間の増減のことですからキャッシュフローとは一定期間の現金的資金の増減を意味します。 そしてこの増減を表わしたものがキャッシュフロー会計の計算書であり、この資金の増加を重視して経営することをキャッシュフロー経営と言っていますね。 |
||
●町田 |
で、それが今なぜ急に取り上げられているんですか。 |
||
●今野 |
不況の長期化でなんとか利益計上の決算にこぎつけても、「勘定合って銭足らず」の言葉にみられるように、黒字であっても資金ショートで倒産する企業が相次いでいることや、会計情報のグローバル化に伴い、証券取引法適用企業にキャッシュフロー計算書が強制されるようになったからです。 |
||
●町田 |
もう少し具体的に教えて下さい。 |
||
●今野 |
例えば、商品5個(仕入単価10万円)仕入し、当期中に3個(売上単価15万円)で売ったとすると、損益計算書では売れた個数で計算するので、(収益) −(費用)=45−30=15万円の利益ですが、キャッシュフロー計算書では、(収入) − (支出)=45−50=△5万円で現金不足です。これが「勘定合って銭足らず」の意味ですよ。 |
||
●町田 |
それじゃ、損益計算書は意味がないのですか。 |
||
●今野 |
意味がないわけではなく、それはそれで重要だと認めつつ、売れない場合のリスクを考えて経営しようということです。もう一つ例をあげれば、固定資産投資で多額の支出があっても、減価償却費はわずかの金額です。 これでは、利益が出ていてもお金がないということが十分にあります。利益が出ているのにお金がないから、配当や仕入のために借金をしなければならない。これでは経営者は、チンプンカンプンです。 固定資産や在庫、売掛金、買掛金が大きければ大きいほど、そのズレは大きくなります。こんな会社ほど、収益、費用とは別の視点で収入、支出を捉える経営が必要ですね。 |
||
●町田 |
では、キャッシュフローのつかみ方はどうするんですか。 |
||
●今野 |
いくつかの分け方がありますが、作成基準ではこれを営業・投資・財務活動に分類し、各活動のキャッシュフローを計算しますが、中心になるのは営業キャッシュフローです。この三つの活動の関係は、営業活動でキャッシュフローを稼ぎ、これを投資活動で使い、もし過不足がある場合は財務キャッシュフローで調整することになります。すなわち、通常では、営業キャッシュフロー > 投資キャッシュフローです。 |
||
●町田 |
なかなかむずかしいですね。先生の話を聞いていると、計算書をみれば、その経営者の姿勢が分かるように聞こえますからね。 |
||
●今野 |
そうですよ。ですから、いかに効率の良い経営をしているかが問われることになります。
町田さんの会社でも、キャッシュフロー経営を一つの目標にされてはどうですか。 |
||
●町田 |
これまでいろいろと聞かせてもらったので、キャッシュフローが大事なことであることは分かりましたが、キャッシュフロー重視の経営の基本的なことを教えて下さい。 |
||
●今野 |
効率的経営すなわち総資産利益率アップ、投資効率アップのための個別プロジェクト採算方式、フロー増加のための財務体質の強化ですね。 これからは景気まかせでなく、キャッシュフローを経営計画に組み込んだ健全経営を心掛けて下さい。 |
||
●町田 |
なかなか大変ですが、やってみます。 (中小企業診断士/金山 順一) |