コミュニティビジネスと商店街 (2001年1月)

(社) 中小企業診断協会富山県支部


町田 最近、商店街で、コミュニティビジネスの研究を始めているところが多いそうですね。
 
今野 コミュニティビジネスとは地域の問題解決に係わるビジネスのことで、富山育ちの加藤敏春前通産省サービス産業課長は「地域コミュニティのニーズである教育、医療、福祉、街づくり、文化に関するビジネス」と、その著書「市民起業」で定義しています。
 
町田 商店街とも関係あるのですか。
 
今野 商店街と福祉の複合事業での代表例は、足立区東和銀座商店街です。当商店街の田中理事長が社長になり、商店主出資による潟Aモールトーワをつくり@高齢者への配食A病院の売店、食堂B障害者による空店舗活用C学校給食Dビル清掃などの業務で180人もの人を雇用しています。
田中理事長は「大型店は稼ぐためにやってくる。しかし、地域の中で生きる商店街は、地域住民のためにある。地域住民にどう喜んでもらえるかを考え、それに応えるのが商店街である。それができない商店街なら、さびれて廃業する店ができても、住民は商店街に同情して買い物などしてくれない。」と言い、「これからは商店街の時代がくる。そのためには、商店街は地域住民に奉仕すべきだ。」と断言しています。
 
町田 ただ、これまで地域のために奉仕すると言って、儲ける事はあまりやられませんでしたね。
 
今野 これまで商店街が地域の問題解決をすると言っても、儲けるだけではないかと言われかねなかったからですが、一昨年、中心市街地活性化法が施行され、中心市街地は地域全体の重要課題になりました。
中心街活性化に取り組む商店主は、商売を通して地域に貢献奉仕したいが、産業人、市民に地域のために協働しませんかと、提案できるようになったのです。
このようなコミュニティビジネスの利点としては、
 @地域の企業、市民組織と協働した複合事業がしやすい。
 Aマスコミのパブリシティ(記事)になり、広報しやすい。
 B人材を募集しやすい。
 C情報収集、出資等の支援を、企業、市民から受けやすい。
などの利点があり、これを活用したビジネスには大きな可能性があります。
 
町田 具体例がありますか。
 
今野 長浜市の高齢者による潟vラチナプラザが惣菜、野菜、喫茶の店を出し、来街者にも好評です。
愛知県足助町の福祉施設百年草では、高齢者がつくるパンとハムが人気で、中心街の集客要因になっています。その近くの岐阜県岩村町では、商店街連合と高齢者による街づくり実行委員会の催事で、年間20万人も集まり、高齢者ボランティア活動が活発で、医療費負担が少ないことでも有名です。
 
町田 富山県の例はありますか。
 
今野 八尾町では県の魅力創生事業補助を受けて、商店街が空き店舗を物産館「風の館」にまで展開させました。
高岡朝市では、高齢者が休憩する宅老喫茶所「プラチナサロン」を、ホームヘルパー達と商店主が協働して取り組み、朝市後も空店舗で定期的に、野菜の委託販売に取り組んでいます。
 
町田 具体的にコミュニティビジネスは、どう進めるのですか。
 
今野 商店街が先ず空き店舗などの場を提供し、ボランティアと協働して高齢者への宅配、会食サービスをしながら、さらに高齢者と協働して、来街者への名物や食事の提供も行っていきます。
 
町田 商店街がボランティアに声を掛けて、うまくいきますか。
 
今野 地域でのコミュニティビジネスの必要性を訴え、先ず試行イベントなどで協働してみることです。
今後は、TMO(タウンマネ−ジャ−組織)が福祉と商店街の受け皿になり、複合事業の主体になることが期待されます。コミュニティビジネスの手数料が、TMOの収入源ともなりましょう。
 
町田 高齢者が集い、訪問客と元気で楽しく交わる中心街ができそうですね。
 
今野 少子高齢化時代を活かし、商店街空洞化対策に繋がるコミュニティビジネスをうまく商店街活動に取り込むことが、今後の中心市街地活性化に繋げるポイントの1つでしょう。

(中小企業診断士/園 利宗)



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