こんな見方もできる民事再生法 (2000年8月)

(社) 中小企業診断協会富山県支部

訪問先の会社経営者繁田氏の何か暗い顔つきに気がついた、コンサルタント今野氏。さっそくジョークのジャブをくりだした。

今野 暗いのが喜ばれるのは、映画館と恋人同士くらい。
 
繁田 ムスッ…。泥棒もでしょ…。実は、焦げ付きそうなんです。
 
今野 料理の趣味をお持ちだとは知りませんでした。火を加減すればよろしいのでは?
 
繁田 いえ、料理のことではありません。受注に応じて部品を納入したものの、その客先がどうもマズイことになっているようなんですよ。入金が遅れることは以前にもあったので、あの会社との取引は、それなりに注意するよう指示はしていたのですが。
 
今野 時節柄、こんな話は珍しくありませんよ。
ところで、4月から施行された「民事再生法」をご存知ですか。客先が倒産してしまっては、売掛金の回収が覚束ないのは当然です。時間は長くかかるものの、回収の可能性が高くなるというのが、今度の法律のミソだと思います。もともとは中小企業の会社再建をねらって作られた法律なのですが、私は債権者側にも役に立ちそうだと考えているのです。
 
繁田 倒産関連の法律なんて縁起でもないと、関心は持っていませんでしたが。
 
今野
 
 
 
 
 
 
 
簡単に内容を紹介しておきましょう。
まず、以前の「倒産法」といわれるものについてお話しておきますが、あれはハッキリいって中小企業には無縁でした。手続きが大変だし、時間がかかるし。「会社更生法」などは、大会社のための法律ですし。
ほかに、会社を再建することに主眼をおいた、「和議法」というのもありました。
 
繁田
 
 
みんなと仲良しになれそうな響き…。わぎあいあい、なんてね。
 
今野
 
 
 
 
 
 
 
ほらほら、私と話をしただけで元気が出てきたでしょ。
ところで、この「和議法」もまた、債権者の同意やらなんやらで大変なんです。
それに会社がパンク状態でないと裁判所に申し立てができなかったので、仮に和議が成立しても後の祭りになりがちでした。そんな状態になってしまってからでは、再建余力がないんですよね。
 
繁田
 
 
 
話は見えてきました。今度の法律では、再建に取り組み易いとおっしゃりたいのですね。
でも、当社の苦衷の役に立ちそうには思えませんが。
 
今野
  
 
 
考えようですよ。相手先を放置しておいて全額の焦げ付きを抱えるか、いち早く再建を計って回収を確実にするか。
どっちを選びますか?
 
繁田
 
 
つまり、相手先に「民事再生法」を適用しなさいと勧めるわけですか。
 

今野
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 

にっちもさっちもいかなくなってからでは、遅いのですよ。
この法律の基本理念は、経営不振の企業を早期に再生するところにあります。
それに債権者保護という意図もあるのです。「完全履行性」という硬い言い方をされていますが、必要があると見られた場合、再生債務者の履行が完全に終了するまで面倒をみるということで債務者保護、つまり債権者にとっても保護に通じます。
ついでに、その他の特徴もあげておきますと、
 
@利用対象が広い。
@柔軟。迅速。
@債務者の経営権が維持される。
@営業譲渡が容易。(黒字部門の売却が可能)
@再建計画の決議要件の緩和。
 
などなど、使い勝手がよさそうです。
 
繁田
 
 
 
と、いうことならば、早速相手に伝えましょう。これですんなり再建が進んでくれると、私の悩みも…。これでパァーッといけそうですね。
 
今野
 
 
 
また、それをいう!そんなことをいってる場合じゃありません。御社が地震にあったさなかですよ。
釘をさしておきましょう。大地震とかけてなんと解く?
 
繁田
 
ム…?
 
今野
 
 
余震(与信)に注意!
 
                 (中小企業診断士/布目 大剛)



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