「経審」の評点アップは (2000年4月)

(社) 中小企業診断協会富山県支部

公共工事の競争入札に参加している建設会社の繁田社長が経営コンサルタントの今野氏を訪ねての話し。

繁田 先生大変なことになりました。
 
今野 どうしました社長。そんなにあわてて。
 
繁田 「経審」の改正があったということで、決算書の数値を新しい基準に入れて評点をだしてみたら、以前より相当評点が下がるので、このままではBランクからCランクに格下げしてしまうんです。我社のように公共工事の比重が大きいところでは、死活問題ですよ。どう変わったのですか。
 
今野 「経審」(公共工事の入札参加資格で経営事項審査のこと)の財務内容の評点方法が大幅に改正されたからですね。
 
繁田 会社の財務内容の点数は、当社は良い点数だったはずですが。
 
今野 ええ、これまでは確かにそうでしたが、評価の仕方がそれなりに変わったのです。それでは今年度から適用される財務分析の指標の考え方を簡単に説明しましょう。ご存知のとおり経営状況を表す指標として、収益性、流動性、安定性、健全性などがあります。以前ではストック、すなわちどれだけ債権や資産を持っているかという観点から短期的な支払能力をあらわす指標として流動比率や当座比率が重視され評点配分が一番高かったし、また収益性をあらわす指標として経営全体の収益力を観る点から売上高経常利益率が重視されていたのですが、今回新たにキャッシュフローという概念が導入されるに伴い本来の事業収益である売上高営業利益率および流動性にかわる安定性が重視されることになったのです。
 
繁田 そのキャッシュフローていったいなんですか。書店ではよくみかけますがね。
 
今野
 
 
 
 
よく「勘定あって銭足らず。」と言うように帳簿上は利益計上となっているが、工事未収金や受取手形などが多く手元に現金が不足していたら大変ですから、そうならないように資金の流れを確保したうえでの利益計上をすることの重視ですね。
 
繁田
 
なるほど。資金不足では黒字倒産もありますからね。
 
今野
 
 
このキャッシュフローを収益性だけでなく、流動性の判断指標にもしていますよ。
 
繁田
 
 
では改正で安定性が重視されたとおっしゃいましたが、どんな意味がありますか。
 
今野
 
 
 
 
指標としては、自己資本比率、有利子負債月商倍率、純支払利息率があります。いずれも自己資本の割合や月商に比べ利息を伴う負債が多いかどうかというこですから、借金体質はだめだということでしょうか。
 
繁田
 
 
 
 
これまでのお話しでは売上高の大小よりも、売上高に応じた収益力、資金繰りの重視、借金体質の改善が必要ということはわかりましたが、目の前の「経審評点」の確保のために何か特効薬のはないもんですかね。
 
今野
 
 
 
 
 
 
 
 
残念ですが、そんなものはありませんよ。
ただ特効薬はないにしても「経審」の改正の意味を充分理解することです。それは企業評価のあり方のほかに、不良不適格業者の排除、そして経営力、技術力の強化のための企業連携、合併を促しているとみるべきです。それを考慮に入れて、短期的な視点ではコストダウンと資金計画をしっかり立てること、長期的な視点では今までのことを組み込んだ中長期の経営計画の策定とそれを確実に実行することです。
 
繁田
 
 
 
そうそう。「経審」評点がオープンになってインターネットで自社の分はもちろん、他社の評点も知ることができるようになって、自分の学校の成績発表を思い出してやりにくいですね。
 
今野
 
 
 
はい。そうすることによって、業界でのサバイバル競争を促しているのですね。いずれにしても「経審」の評点アップは、真の経営内容の充実であると考えて下さい。
 
繁田
 
 
 
いずれにしても、地道な努力が必要ということですかね。
    
                (中小企業診断士/金山 順一)



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