ナスダック・ジャパンとベンチャー経営者 (2000年2月)

(社) 中小企業診断協会富山県支部


繁田 今野さん、うちの会社も出来ればベンチャーキャピタルの資金を導入したいんだけど、可能性あるんでしょうか?
 
今野 繁田さんのところは技術的に市場性があるし、ビジネスの展開の組立もしっかりしているから、最近のベンチャーキャピタルの基準では十分可能性がありますよ。
 
繁田 ちょっと前は難しかったのにえら偉く変わりましたね。
 
今野 今年7月にソフトバンク社長の孫正義さんがアメリカのナスダック(店頭銘柄気配自動通報システム)をモデルとした構想を発表してから、日本の証券市場がものすごい勢いで変わってきているからなんです。ナスダックジャパンの発表があってからすぐに、東証がベンチャー企業向けに将来性を重視したマザーズをオープンすると発表しました。
東証に、ナスダックジャパンとこれを運営する大証の連合、これまであった店頭市場が将来性有望な会社の取り合いを始めています。
そのおかげで、将来性のあるベンチャーのIPO(株式の公開)が容易になり、ベンチャーキャピタルもキャピタルゲインを得やすくなったので、将来性のあるベンチャー企業へ、より積極的に資金を提供しようとしているんです。
最近はベンチャーキャピタルの担当者と打ち合わせしても、まずマザーズに公開しその調達資金でM&A(合併と買収)して…なんて成長ストーリーを多用するようになっています。
 
繁田 そうですか。我々にとってチャンス到来ですね。
 
今野 その通りです。資金調達がしやすくなってきたし、おまけにIPOを会社の戦略に組み込めるため、いろいろな可能性が広がってきていますよ。
 
繁田 ほう。どんな可能性があるんですか?
 
今野
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
なんと行っても大きいのは、ストックオプション(自社株購入権)制度を使えることです。通常ベンチャー企業は、大企業に比べて待遇面などで劣るため、優秀な人材を雇用することが容易ではありません。そこで、雇用したい人材にストックオプションを与えることにより、将来のIPOのキャピタルゲインをインセンティブとして使えます。
その企業が成功してIPOするとなれば、そのストックオプションは正におお化けしますから。最近は、ネット関連の公開企業では、初値で軽く数百万円を超えています。行使価格5万円のオプションを20株でも付与された人は、キャピタルゲイン1億円となる可能性もあります。
しかも、先の国会で中小企業創造法と新事業創出促進法の改正が成立し、コンサルタントや公認会計士などの専門家にもストックオプションが付与できるようになりますし。優秀なコンサルタントも、ストックオプションで雇うことが可能になるんです。
 
繁田
 
日本のベンチャー企業の未来はバラ色になってきましたね。
 
今野
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
良いことばかりじゃないんです。
実は、ベンチャー経営者がちやほやされ出して、その上突然大金を手に入れて、浮かれてしまって、本業がおろそかになるんじゃないかという危惧が出てきています。
この前、東証のマザーズの発表会で、「来年の公開候補会社です」、ということで、会場の壇上にベンチャーの経営者が20人くらいあがって盛んに誉めそやされていました。これでは、壇上の会社は天下の東証のお墨付きをもらってると錯覚しますね! 
東京・渋谷版シリコンバレーであるビットバレーの集まりも、最近ブームみたいになって1000人も集まっているけど…そのうち半分くらいは時代の先端の有名パーティーにでも出ている感覚ですから。 私の関係している会社も、ビットバレーでベンチャーキャピタルや弁護士と出会って飛躍につなげているから文句は言えないんですけどね。
大手ベンチャーキャピタルから4億円出資をもらった某ネットベンチャーの社長が、ゴルフ場の会員権を買ったという話までありますし。
これからのベンチャー経営者は、大金が入ってきても、ちやほやされても目的を見失わない冷静さと意思の強さが必要ですね。
 
繁田
 
 
 
 
それは大変だ。今野さん、ストックオプションでうちのコンサルタントして私が浮かれて失敗しないように見ててください。
 
                (中小企業診断士/島田 秀喜)
 



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