助成金活用術 (2000年1月)

(社) 中小企業診断協会富山県支部

新商品開発に張り切っておられる繁田社長。
しかし、なんだか雲行きが怪しそう・・・。

繁田 うーん。
 
今野 こんにちは、繁田社長。そろばんなんか振り回して、どうしたんですか?
 
繁田 あ、今野先生、お金貸してください!
 
今野 えっ、どうしました!まさか資金繰りが・・・。
 
繁田 いえ、そうじゃないんです。すいません、驚かして。実は、当社も先生の助言に基づいて、下請からの脱却を目指し、自社製品の開発に取り組もうとしているのはご存知ですね。
 
今野 はい。長引く不況で親会社の収益は最悪、下請に対する締め付けは、まだまだ厳しくなると予想されます。
 
繁田 そうなんです。それで私も以前から暖めていたアイデアがあったので、具体的に開発に取り組む気になったのです。
 
今野
 
ところが、いざ事業計画を立ててみると、お金が足りない!
 
繁田
 
 
そのとおりです。お金も足りなければ、人も足りない!中小企業の悲しい宿命です。
 
今野
 
それで私にお金を貸してくれと。
 
繁田
 
 
今期も減収減益ですし、金融機関からもずいぶん借りているので、これ以上融資してくれる保証もありません。
 
今野
 
うーん。
 
繁田
 
 
はっ。まさか先生、お金を貸してやるから、代わりに腎臓をよこせと言うんじゃないでしょうね。
 
今野
 
 
いや、いや、私はそんな趣味はありません。
それよりも、助成金の活用を検討されてはいかがですか。
 
繁田
 
 
 
助成金ですか。何か色々あるのは聞いているのですが、何がどうなのか分かりにくい上に、手続きも面倒じゃないんですか。
 
今野
 
 
 
 
 
確かに分かりにくくて、面倒なものも多いですし、次々と変わりますので厄介ですが、活用しないのはもったいないです。
何と言っても、助成金は融資ではないので返す必要がないのです。資金に苦しんでおられる事業主にとって、こんないい話はありません。
 
繁田
 
確かに面倒だなんて言っていられませんね。
 
今野
 
 
最近は、新分野や新事業に関する助成金が増えていますので、社長のところにも当てはまるものがあると思いますよ。
 
繁田
 
例えばどんなものがありますか。
 
今野
 
 
 
 
 
 
労働省関係が多いのですが、最近のものですと、創業や異業種進出のために労働者を雇い入れたい場合の「中小企業雇用創出人材確保助成金」、同じく従業員の教育訓練を行いたい場合の「中小企業雇用創出等能力開発給付金」、新規・成長分野事業を行う事業主が一定の労働者を雇い入れた場合の「新規・成長分野雇用創出特別奨励金」などがあります。
 
繁田
 
ほかにはどんなものがありますか。
 
今野
 
 
 
通産省関係ですと、中小企業創造活動促進法や中小企業経営革新支援法に基づいた補助金や融資枠の拡大、税制上の特例措置などがあります。
 
繁田
 
何か当てはまるものがありそうですね。
 
今野
 
 
 
 
ただし、注意してもらいたいのは、助成金はあくまでも手段であって、目的ではないということです。助成金をもらいたいから人を雇ったり、新事業を行ったりするのは、本末転倒ということになります。
 
繁田
 
 
分かりました。これで先生に腎臓を取られなくて済みそうですね。
 
今野
 
じゃー、代わりにこれから献血にでも行きますか。
 
繁田
 
 
えっ。

                 (中小企業診断士/板谷 聡)



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